1.血清蛋白分画とは何か
血清中には100種類以上の様々な蛋白質が含まれおり、アガロースゲル電気泳動法において、大きく5分画(アルブミン、α1、α2、β、γ)に分離することができます。この分画は、血中の蛋白の動的平衡を反映し、通常一定の電気泳動パターン(波形パターン)を示します。ところが、疾病などの要因(蛋白の合成、体内分布、崩壊、体外への漏出などの異常)によりこの動的平衡が崩れると、蛋白分画は病態に特徴的な波形パターンを示します。
2.血清蛋白分画の特徴
| アルブミン | アルブミン単一成分、総蛋白の約6割を占める |
| α1グロブリン | α₁-アンチトリプシン、α₁-酸性糖蛋白などの急性相反応蛋白 |
| α2グロブリン | α₂-マクログロブリン、ハプトグロビン、セルロプラスミンなどの急性相反応蛋白 |
| βグロブリン | トランスフェリン、補体(C3、C4)、βリポ蛋白など |
| γグロブリン | 免疫グロブリン(IgG, IgA, IgM)など |
正常の波形パターンは、アルブミンが最も高く、 α1 < α2 < β > γ になります。分画値は、 アルブミン > γ > β > α2 > α1 の順です。 M蛋白とよばれるモノクローナル免疫グロブリンが存在すると、α2~γ位付近に鋭いピークが出現します。
3.電気泳動によってどう分析されるか
電気泳動法により、蛋白質の電荷の違いを利用して分離します。陽極側から、アルブミン、α1、α2、β、γの順に分画します。泳動後、デンシトメーターで各分画の波形パターンを形成し、分画値(%)を算出します。
4. 臨床的にどう解釈されるか
| 蛋白不足型(非選択性) | 栄養摂取の不足、蛋白漏出性胃腸症 総蛋白↓著減、アルブミン↓著減の場合、蛋白成分が非選択的に漏出 |
| ネフローゼ型 | ネフローゼ症候群(高度蛋尿、低蛋白血症、浮腫)、腎臓の障害 総蛋白↓減少、アルブミン↓減少、α2↑増加の場合、糸球体の透過性が亢進し、蛋白成分が選択的に漏出、大分子蛋白が血中に蓄積 |
| 肝硬変型 | 高度肝障害(肝硬変、劇症肝炎) アルブミン↓減少、γ↑増加、β-γブリッジ形成(βとγの境界不明瞭) の場合、肝臓の蛋白合成能の低下、免疫グロブリン合成増加 |
| 慢性炎症型 | 感染症、心筋梗塞、血栓症、悪性腫瘍 α1↑増加、α2↑増加、γ↑増加の場合、急性相反応蛋白、免疫グロブリン増加 |
| γ分画広域増加型 | 多クローン性γグロブリン血症、炎症性疾患 γ↑増加 の場合、 免疫グロブリン増加 |
| M蛋白血症型 | 単クローン性免疫グロブリン血症、多発性骨髄腫、マクログロブリン血症、MGUS α2~γ位に鋭いピークが出現の場合、免疫グロブリン増加 |
血清蛋白分画検査は、患者の病態の推定と、多発性骨髄腫等で出現するM蛋白の検出に必須の検査です。M蛋白は単一の形質細胞が腫瘍性に増殖し、全く同じ構造を持つ免疫グロブリンが大量に産生されることによって出現します。Mピークが発見された場合、免疫固定法あるいは免疫電気泳動法でM蛋白のクラス(IgG、IgA,、IgM)とタイプ(κ、λ)を判定します。M蛋白は血清蛋白分画を端緒として発見されることが多く、スクリーニングとして優れた検査方法です。また、治療後のM蛋白の増減は治療効果の判定に必要な情報です。
最終更新日:2026.10.02